事例Ⅳ ~平成23年度 解答例(3)(営業CF)~

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平成23年度の事例Ⅳに関する解答例(案)を説明していきます。

私なりの思考ロジックに基づく解答例(案)を以下に説明しますので、参考としてもらえればと思います。

 

目次

事例Ⅳ ~平成23年度試験問題一覧~

平成23年度の他の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

キャッシュ・フロー計算書

「キャッシュ・フロー」とは、「キャッシュ(資金)」の「フロー(流れ)」であり、「資金の収入・支出」を示しています。

企業活動による「資金の収入・支出」の報告資料が「キャッシュ・フロー計算書」であり、「キャッシュ・フロー計算書」は「貸借対照表」や「損益計算書」と同様に、株主を始めとした利害関係者が、企業の経営状況を知るために重要な情報源です。

二次試験では、「貸借対照表」や「損益計算書」から「キャッシュ・フロー計算書」を作成して、経営上の問題がどこにあるかを指摘するというパターンの問題が出題されます。

 

第1問(設問2)

財務諸表に基づき「営業活動によるキャッシュ・フロー」を求める問題です。

第1問(設問2)

 

D社の営業キャッシュフローの計算過程を(a)欄に示し、今後の経営上の課題について(b)欄に100字以内で述べよ。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方(設問2)(a)営業CFの計算過程

フリーフォーマットで「営業活動によるキャッシュ・フロー」を求めて、その結果からD社の経営上の課題を指摘する問題です。
事例Ⅳで「営業活動によるキャッシュ・フロー」を扱う問題としては、最も出題可能性の高いパターンだと思われます。

 

【営業活動によるキャッシュ・フロー】

 

Step1.非資金損益項目の調整

非資金損益項目の調整では「減価償却費」と「貸倒引当金」について調整を行います。
「減価償却費」は加算して、貸倒引当金は「±(増加は加算、減少は減算)」するので、以下の通りとなります。

 

項目 +/- 金額
減価償却費 22
貸倒引当金 ± 0

 

Step2.営業外損益と特別損益の調整

営業外損益と特別損益の調整では、費用・損失は加算、収益・利益は減算するので、以下の通りとなります。

 

項目 +/- 金額
営業外収益 ▲5
営業外費用 40

 

Step3.営業活動に関連する資産と負債の増減に関する調整

営業活動に関連する資産と負債の増減に関する調整では、資産(売上債権/棚卸資産)は「∓(増加は減算、減少は加算)」して、負債(仕入債務)は「±(増加は加算、減少は減算)」するので、以下の通りとなります。

 

項目 +/- 金額
売上債権の増減額 ▲21
棚卸資産の増減額 9
仕入債務の増減額 ± ▲13
その他固定負債 ± ▲2

 

参考:資産・負債の増減と営業CFの加減算

 

その他固定負債の扱いについて

今回の問題では、「その他固定負債」をどのように扱うかがポイントです。

「営業活動によるキャッシュ・フロー」に記載される対象は、営業活動に関連するものだけでなく「投資活動によるキャッシュ・フロー」と「財務活動によるキャッシュ・フロー」に区分されない項目が全て記載されます。

「その他固定負債」はその内容が分からず、「投資活動」「財務活動」のいずれにも区分することができないため、「営業活動によるキャッシュ・フロー」に記載することとなります。

 

Step4.投資活動や財務活動に該当しないCFの調整

投資活動や財務活動に該当しないキャッシュ・フローの調整では、「利息の受取額」は加算、「利息の支払額」と「法人税等の支払額」は減算するので、以下の通りとなります。

「小計」よりも下の項目では、実際に受け取った金額、または実際に支払った金額を記載するため、「前払利息」「前受利息」「未払利息」「未収利息」「未払法人税等」などが計上されていないか確認する必要がありますので、注意してください。

 

項目 +/- 金額
利息の受取額 5
利息の支払額 ▲40
法人税等の支払額 ▲4

 

法人税等の支払額の算出

貸借対照表において「未払法人税等」が計上されていることに注意が必要です。

前期末における貸借対照表では「2百万円」が計上されており、今期末の貸借対照表では「4百万円」が計上されています。

また、今期の損益計算書では「法人税等」が「6百万円」が計上されています。

したがって、今期に実際に支払った現金は、「6百万円 -(4百万円 - 2百万円)= 4百万円」となります。

 

営業活動によるCFの検算

「営業CF」を求めましたが、私は「営業CF」を求める問題が出題された場合は、最後に計算過程にミスがないかを確認するために「投資CF」と「財務CF」も計算して、「営業CF」「投資CF」「財務CF」の合計金額を、貸借対照表の「現金・預金」の増減額と比較して一致するかどうかを確認していました。

短い試験時間との戦いなので、実施するかどうかは各自にてご判断いただければと思いますが、今回の問題でも、計算から漏れてしまいがちな「その他の固定負債」の計上漏れを防ぐことができます。

 

投資活動によるCF

貸借対照表において「投資有価証券」が「1百万円」減少しているため、売却したものとして「投資CF」を計算します。

なお、損益計算書において「有価証券売却損益」が計上されていないため、現金収入は「1百万円」ということになります。

投資有価証券の売却による収入 1
投資活動によるキャッシュフロー 1

 

財務活動によるCF

貸借対照表において「短期借入金」と「長期借入金」が増加しているため、借入による現金の収入として「財務CF」を計算します。

短期借入金による収入 12
長期借入金による収入 18
財務活動によるキャッシュ・フロー 30

 

営業活動・投資活動・財務活動によるCFの合計

「営業CF」「投資CF」「財務CF」を合計すると、キャッシュ・フローが「37百万円」増加していることが分かります。

営業活動によるキャッシュフロー 6
投資活動によるキャッシュ・フロー 1
財務活動によるキャッシュ・フロー 30
キャッシュ・フローの増加額 37

 

貸借対照表における「現金・預金」の増加額

「貸借対照表」において、「現金・預金」を昨年度末と比較すると「37百万円」増加していることが分かります。

科目 D社
平成21年度末
D社
平成22年度末
キャッシュ
の増減
現金・預金 126 163 37

 

「営業CF」「投資CF」「財務CF」の合計金額と、貸借対照表の「現金・預金」の増加額が一致しているため、計算漏れがないことを確認することができました。

 

 

考え方(設問2)(b)今後の経営上の課題

「営業活動によるキャッシュ・フロー」を確認すると、大きなマイナスとなっている以下の項目をD社の課題として捉えることができます。

  • 売上債権の増加額
  • 仕入債務の減少額
  • 利息の支払額

 

「利息の支払額」については、設問1の経営分析において指摘しているため、設問2では「売上債権の増加額」と「仕入債務の減少額」を指摘していきます。

与件文に「大手スーパーとの取引が順調に伸びている」との記載があるため、大手スーパーからの代金回収がうまくいっていない(支払期限が長く設定されている)と考えられます。

また、仕入先の情報はありませんが、大手スーパーに販売している商品の仕入において、支払期限が短く設定されていると考えられます。

つまり、代金の回収と支払のバランスが悪く、運転資金が不足するなどの事態に陥る可能性が考えられるため、運転資金の管理を強化することがD社の経営上の課題だと考えられます。

 

これらの内容を「100字以内」でまとめます。

 

売上債権の増加と仕入債務の減少によりキャッシュフローが悪化している。大手スーパーとの取引拡大に向けて、売上債権の回収条件や仕入債務の支払条件を見直して、運転資金の管理を強化することが経営上の課題である。(100文字)

 

解答(設問2)

問題文で与えられている財務諸表の数値から「営業活動によるキャッシュ・フロー」を求めると以下の通りとなります。「その他固定負債」が漏れないように注意しましょう。

(a)営業CFの計算過程

(単位:百万円)
税引前当期純利益 15
減価償却費 22
営業外収益 ▲5
営業外費用 40
売上債権の増減額 ▲21
棚卸資産の増減額 9
仕入債務の増減額 ▲13
その他固定負債 ▲2
小計 45
利息及び配当金の受取額 5
利息の支払額 ▲40
法人税等の支払額 ▲4
営業活動によるキャッシュフロー 6

 

(b)今後の経営上の課題

売上債権の増加と仕入債務の減少によりキャッシュフローが悪化している。大手スーパーとの取引拡大に向けて、売上債権の回収条件や仕入債務の支払条件を見直して、運転資金の管理を強化することが経営上の課題である。(100文字)

 


 

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