財務・会計 ~H26-4 本支店会計(2)未達事項整理~

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今回は、「財務・会計 ~H26-4 本支店会計(2)未達事項整理~」について説明します。

 

目次

財務・会計 ~平成26年度一次試験問題一覧~

平成26年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

本支店会計 -リンク-

「本支店会計」については、過去にも説明していますので、以下のページにもアクセスしてみてください。

 

本支店会計 -リンク-

本ブログにて「本支店会計」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

合併財務諸表の作成

「本支店会計」では、「本店」や「各支店(各事業部)」において、それぞれの業績を明確に把握することなどを目的として、個別の会計帳簿に基づく財務諸表を作成しますが、決算など外部に報告するためにはこれらを合算して会社全体の財務諸表を作成する必要があります。

会社全体の財務諸表を作成するにあたっては、「本店」や「各支店(各事業部)」の財務諸表に対して以下の調整を行いながら「合併財務諸表(会社としての財務諸表)」を作成していきます

  1. 未達事項整理
  2. 内部取引の相殺
  3. 内部利益(未実現利益)の控除

 

 

未達事項整理

未達事項とは、取引は発生したが本店と支店間で情報の伝達ができておらず、本店または支店のいずれかまたは両方で仕訳が行われていない状態をいいます。

なお、以下に示す勘定科目は「照合勘定」と呼ばれ、未達事項を整理した後、必ず金額が一致します。もし、金額が一致しない場合は、未達事項整理などの処理が正しく実施されていないと考えてください。

  • 本店の「支店勘定(借方)」と支店の「本店勘定(貸方)」
  • 本店の「支店への売上(貸方)」と支店の「本店より仕入(借方)」
    (または、本店の「支店より仕入(借方)」と支店の「本店への売上(貸方)」)

 

 

内部取引の相殺

本店と支店間における取引は、あくまで会社の内部取引であり、決算など外部に報告する財務諸表では計上しないため相殺します。相殺する勘定科目を以下に示します。

  • 本店の「支店勘定(借方)」と支店の「本店勘定(貸方)」
  • 本店の「支店への売上(貸方)」と支店の「本店より仕入(借方)」
    (または、本店の「支店より仕入(借方)」と支店の「本店への売上(貸方)」)

前述の通り、上記の勘定科目は未達事項を整理した後、必ず金額が一致するため、相殺することで「\0」となります。「\0」とならない場合は、未達事項整理などの処理が正しく実施されていないと考えてください。

 

内部利益(未実現利益)の控除

本店が仕入先から調達した商品を、支店に受け渡して(勘定科目:本店より仕入/支店への売上)、支店が顧客に販売する形態で運用している会社において、本店から支店への受け渡し価格に利益が上乗せされているケースをイメージしてください。

 

 

本店において「100円」の利益が計上され、支店においても「100円」の利益が計上されるため、会社としては「200円」の利益が計上されることとなります。

 

決算のタイミングで、顧客に販売済みの商品については、決算など外部に報告する会社の財務諸表においても「収益:1,200円」「売上原価:1,000円」「売上総利益:200円」として問題ありませんが、商品が販売されずに支店に在庫として保管されている場合は、会社としてはまだ売上が計上されておらず、本店で計上しようとしている利益(100円)が実現していない状態となっています。

このような利益を「内部利益(未実現利益)」といい、合併財務諸表(会社としての財務諸表)から控除しなければなりません。

 

 

例えば、本店が仕入先から「1,000円」で仕入れた商品を支店に「1,100円(支店への売上)」で提供したが、当期中に商品が販売されず支店における期末の商品棚卸高が「1,100円(本店からの仕入)」であった場合、「内部利益(未実現利益):100円」を「合併財務諸表(会社としての財務諸表)」における「損益計算書の期末商品棚卸高」および「貸借対照表上の商品勘定」から直接控除します。(前年度末の決算において未実現利益があった場合は、期首商品棚卸高からも控除する必要があります。

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成26年度 第4問】

当社は支店分散計算制度を採用しており、本支店間の債権債務は支店勘定と本店勘定をそれぞれ利用して会計処理している。未達事項整理前の本店の支店勘定残高は400,000円(借方残高)であり、決算において判明した未達事項は以下のとおりであった。未達事項整理後の支店の本店勘定貸方残高として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 

[未達事項]

・本店から支店に現金70,000円を送付した。
・支店は本店負担の運送費30,000円を支払った。
・支店は本店の売掛金80,000円を回収した。

 

[解答群]

ア 300,000円
イ 350,000円
ウ 380,000円
エ 450,000円

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

今回の問題は、本店と支店の財務諸表を合算して会社としての財務諸表を作成していくために行う課程の一つである「未達事項整理」に関する問題です。

試験問題の文頭に「支店分散計算制度」と記載されていますが、問われている内容は本店と支店間の取引に関する内容のため、仮に「本店集中計算制度」だとしても答えは変わりません

また、本店の支店勘定残高が400,000円(借方残高)で、未達事項に「①本店から支店に現金70,000円を送付した」という取引が記載されている点が少し混乱を招くポイントです。

 

本店と支店における仕訳

まずは、未達事項の取引において、本店と支店がそれぞれどのような仕訳を行うかを考えていきます。

①本店から支店への現金の支払い

この処理を本店と支店でそれぞれ仕訳する場合、本店としては支店への現金支払、支店としては本店からの現金受取と考えるため、以下の通りとなります。

 

本店側の仕訳

借方 貸方
支店 70,000円 現金 70,000円

 

支店側の仕訳

借方 貸方
現金 70,000円 本店 70,000円

 

②運送費の支払い

本店支店の区別なく、一つの企業が運送費を支払った場合の仕訳は以下の通りです。

 

借方 貸方
運送費 30,000円 現金 30,000円

 

この処理を本店と支店でそれぞれ仕訳する場合、実際に現金を支払ったのは支店となるため、以下の通りとなります。

 

本店側の仕訳

借方 貸方
運送費 30,000円 支店 30,000円

 

支店側の仕訳

借方 貸方
本店 30,000円 現金 30,000円

 

③売掛金の回収

本店支店の区別なく、一つの企業が売掛金を受け取った場合の仕訳は以下の通りです。

 

借方 貸方
現金 80,000円 売掛金 80,000円

 

この処理を本店と支店でそれぞれ仕訳する場合、実際に現金を受け取ったのは支店となるため、以下の通りとなります。

 

本店側の仕訳

借方 貸方
支店 80,000円 売掛金 80,000円

 

支店側の仕訳

借方 貸方
現金 80,000円 本店 80,000円

 

未達事項の仕訳まとめ

上記で説明した、本店と支店における未達事項に関する仕訳を以下に示します。

 

本店 支店
借方 貸方 借方 貸方
支店 70,000円 現金 70,000円 現金 70,000円 本店 70,000円
運送費 30,000円 支店 30,000円 本店 30,000円 現金 30,000円
支店 80,000円 売掛金 80,000円 現金 80,000円 本店 80,000円

 

本店における支店勘定と支店における本店勘定

本支店会計では、本店には「支店勘定(借方)」が、支店には「本店勘定(貸方)」があり、本支店間における取引を記録しています。

本店と支店間における1対1の取引であるため「未達事項整理」実施後の金額は必ず同額となり、本店と支店の財務諸表を合算して会社としての財務諸表を作成していくために行う課程の一つである「内部取引の相殺」において相殺される勘定科目です。

 

今回の試験問題では、未達事項整理前の本店における支店勘定(借方)の金額が明記されており、未達事項整理後の支店における本店勘定(貸方)の金額を求められています。

そのため、解答を求めるために、未達事項整理前の本店における支店勘定(借方)から未達事項の内容を反映していきますが、ここで1点だけ注意点があります。(混乱を招くポイント)

未達事項である「①本店から支店への現金の支払い」については、あくまで本店から支店へ未達ではありますが、本店では既に仕訳されている状態であるということです。

 

本店における支店勘定(借方)と支店における本店勘定(貸方)の未達事項整理の内容を以下に示します。

 

 

上記の通り、「未達事項整理」実施後の金額は必ず同額となるため、「未達事項整理」の支店の「本店勘定(貸方)」は「450,000円」となります。

 

答えは(エ)です。


 

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