財務・会計 ~H29-1 棚卸資産の評価(1)~

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今回は、「財務・会計 ~H29-1 棚卸資産の評価(1)~」について説明します。

 

目次

財務・会計 ~平成29年度一次試験問題一覧~

平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

棚卸資産の評価 -リンク-

「棚卸資産の評価」については、過去にも説明していますので、以下のページにもアクセスしてみてください。

 

棚卸資産の会計処理

棚卸資産の会計処理は「棚卸資産の評価に関する会計基準」によって定められており、棚卸資産における評価方法、評価基準および開示手順が記載されています。

棚卸資産とは、決算ごとにその数量やその価値等の棚卸を行う資産であり、流動資産に区分されます。具体的には、以下の資産が対象となります。

  1. 販売するために仕入れた商品
  2. 自社で生産した製品
  3. 生産途中にある半製品や仕掛品
  4. 短期間のうちに生産に使用される原材料や貯蔵品
  5. 販売活動や管理活動で短期間のうちに消費される事務用消耗品
  6. 市場価格の変動により利益を得ることを目的として保有するトレーディング資産

今回の記事で説明する内容は「1~5」までの範囲とします。

 

棚卸資産の評価方法

「棚卸資産の評価方法」は、以下に示す方法の中から選択して適用します。
なお、「棚卸資産の評価方法」は、事業の種類、棚卸資産の種類、その性質及びその使用方法等を考慮した区分ごとに選択するとともに、継続して適用しなければなりません。

  • 個別法
  • 先入先出法
  • 平均原価法(総平均法または移動平均法)
  • 売価還元法

「後入先出法」は認められていません。

上記の評価方法以外に、原価計算基準には「後入先出法」という方法が示されています。

「後入先出法」とは、最も新しく取得されたものから棚卸資産の払出しが行われ、期末棚卸資産は最も古く取得されたものからなるとみなして、棚卸資産の価額を算定する方法ですが、「棚卸資産の評価に関する会計基準」では「後入先出法」は、棚卸資産の実際の流れを忠実に表現しているとはいえないとし、棚卸資産の評価方法として認めていません

 

棚卸資産の評価基準

棚卸資産の「取得原価」は、原則として購入代価または製造原価に引取費用等の付随費用を加算して算出します。

棚卸資産は、取得原価で貸借対照表に記載しますが、期末の棚卸によって「正味売却価額」が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額を貸借対照表に記載するとされており、この評価基準を「低価法」といいます。
この場合、取得原価と当該正味売却価額(簿価切下額)との差額は、当期の費用(商品評価損)として処理します。

なお、製造業における原材料等のように再調達原価の方が把握しやすく、正味売却価額が当該再調達原価に歩調を合わせて動くと想定される場合には、継続して適用することを条件として、正味売却価格ではなく、再調達原価により評価することができます

前期に計上した簿価切下額の戻入れに関しては、当期に戻入れを行う方法(洗替え法)と行わない方法(切放し法)のいずれかの方法を棚卸資産の種類ごとに選択することができます。

 

品質低下商品・陳腐化商品の評価損

「棚卸資産の評価基準」では、棚卸資産の良品に関する簿価切下だけではなく、「品質低下」や「陳腐化」といった売り物にならないような棚卸資産に関する会計処理方法ついても記載されています。

両者の発生原因は異なりますが、正味売却価額が下落することにより収益性が低下しているという観点からみれば、会計処理上、それぞれの区分に相違を設ける意義は乏しいと考えられることから、いずれの場合も商品評価損として取り扱うとされています。

項目 品質低下評価損 陳腐化評価損 低価法評価損
①発生原因 物質的な劣化 経済的な劣化(商品ライフサイクルの変化) 市場の需要変化
②棚卸資産の状態 欠陥 正常
③売価の回復可能性 なし あり

 

棚卸減耗費と商品評価損

「棚卸資産の評価基準」では「商品評価損」について記載されていますが、期末に棚卸資産を評価する際には「棚卸減耗費」と「商品評価損」という2つの勘定科目が使用されます。

  • 棚卸減耗費
    「棚卸減耗費」は、数量不一致を表しており、帳簿上の商品の数量(帳簿数量)と実際の商品の数量(実地数量)の差分で求められます。
  • 商品評価損
    「商品評価損」は、商品の価値低下を表しており、実際に存在する商品の貸借対照表価額(簿価切下前)と正味売却価額の差分で求められます。

 

棚卸減耗費と商品評価損のイメージ図

「棚卸減耗費」と「商品評価損」については、以下の図を覚えておくことをお薦めします。

全体の大きな四角が、「貸借対照表価額(簿価切下前)」を示しており、「棚卸資産減耗費(赤色四角)」と「商品評価損(緑色四角)」で評価した結果が、「貸借対照表価額(切り下げ後)(青色四角)」となります。

 

 

棚卸減耗費と商品評価損の表示区分

損益計算書における「棚卸減耗費」と「商品評価損」の表示区分を以下に示します。
若干の言葉の定義は異なりますが、「棚卸減耗費」と「商品評価損」共に、毎期発生するような一般的な理由によるか、突発的に発生するような臨時的な理由によるかで、表示区分が異なってきます

 

項目 条件 損益計算書の
表示区分
棚卸減耗費 原価性あり
(毎期発生するような正常な範囲)
売上原価
販売費
原価性なし
(臨時の事象により発生した異常な範囲)
営業外費用
特別損失
商品評価損 原則 売上原価
臨時の事象に起因し、かつ多額な場合
(重要な事業部門の廃止、災害損失の発生)
(簿価切下額の戻入れは不可)
特別損失

 

棚卸減耗費と商品評価損の仕訳

「棚卸減耗費」と「商品評価損」を計上する場合の仕訳を以下に示します。
貸方の「棚卸資産」には、貸借対照表価額を「正味売却価額」に変更する勘定科目が入ります。

借方 貸方
棚卸減耗費
商品評価損
10,000
20,000
棚卸資産(商品、製品、仕掛品など) 30,000

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成29年度 第1問】

次の期末商品に関する資料に基づいて、棚卸減耗費と商品評価損の金額の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 

[資料]

帳簿棚卸数量 60個
実地棚卸数量 50個
原価 @200円
正味売却価額 @190円

 

[解答群]

ア 棚卸減耗費:1,900 円 商品評価損:500 円
イ 棚卸減耗費:1,900 円 商品評価損:600 円
ウ 棚卸減耗費:2,000 円 商品評価損:500 円
エ 棚卸減耗費:2,000 円 商品評価損:600 円

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

棚卸資産の評価に関する問題です。

今回の問題では、品質低下品や陳腐化品に関するデータは与えられていないため、実地確認の結果、すべて良品であったということを示しています。

その場合、「棚卸減耗費」と「商品評価損」の関係は、以下の通りとなります。

 

 

答えは(ウ)です。


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