財務・会計 ~H29-4-2 工事契約(2)~

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今回は、「財務・会計 ~H29-4-2 工事契約(2)~」について説明します。

 

目次

財務・会計 ~平成29年度一次試験問題一覧~

平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

工事契約 -リンク-

「工事契約」については、過去にも説明していますので、以下のページにもアクセスしてみてください。

 

工事契約で使用する勘定科目

「工事契約に関する会計基準」では、特殊な勘定科目が定義されています。
実際の企業が財務指標の表示で使用する勘定科目と「工事契約に関する会計基準」で定義されている勘定科目のマッピングを以下に示します。

財務指標 実際の企業が財務指標の表示で使用する勘定科目 「工事契約に関する会計基準」で定義されている勘定科目
損益計算書 売上高 工事収益
売上原価 工事原価
売上総利益 工事利益
貸借対照表 仕掛品 未成工事支出金
売掛金 工事未収入金
買掛金 工事未払金
前受金 未成工事受入金

 

工事契約の会計処理

「工事契約」の会計処理に関する仕訳を以下に説明します。
「工事契約(1)」の「例題」で説明した工事内容に基づき、「工事進行基準」と「工事完成基準」における仕訳を示していきます。

以下の説明には表現しきれていませんが、企業が「工事収益(売上高)」や「工事未収入金(売掛金)」を認識する前に、顧客から入金があった場合は「未成工事受入金(前受金)」による仕訳が追加で必要となります。

 

工事進行基準

各年度において「工事収益(売上高)」を認識するため、「第X1年度~第X3年度」にかけて同様の仕訳が行われます。

 

第X1年度~第X3年度の損益計算

各期における損益計算の結果は以下の通りとなります。

項目 第X1年度 第X2年度 第X3年度 工事全体
工事収益 112,500千円 91,500千円 96,000千円 300,000千円
工事原価 90,000千円 80,000千円 90,000千円 260,000千円
工事利益 22,500千円 11,500千円 6,000千円 40,000千円

 

第X1年度
借方 貸方
未成工事支出金(仕掛品) 90,000 材料費・労務費・経費など 90,000
工事原価(売上原価) 90,000 未成工事支出金(仕掛品) 90,000
工事未収入金(売掛金) 112,500 工事収益(売上高) 112,500

 

第X2年度
借方 貸方
未成工事支出金(仕掛品) 80,000 材料費・労務費・経費など 80,000
工事原価(売上原価) 80,000 未成工事支出金(仕掛品) 80,000
工事未収入金(売掛金) 91,500 工事収益(売上高) 91,500

 

第X3年度
借方 貸方
未成工事支出金(仕掛品) 90,000 材料費・労務費・経費など 90,000
工事原価(売上原価) 90,000 未成工事支出金(仕掛品) 90,000
工事未収入金(売掛金) 96,000 工事収益(売上高) 96,000

 

工事完成基準

工事が完成して目的物の引渡しを行う第X3年度に「工事収益(売上高)」を認識するため、「第X1年度~第X2年度」では「未成工事支出金(仕掛品)」を計上して、「第X3年度」に「工事収益(売上高)」、「工事原価(売上原価)」と「工事未収入金(売掛金)」を計上します。

 

第X1年度~第X3年度の損益計算

各期における損益計算の結果は以下の通りとなります。

項目 第X1年度 第X2年度 第X3年度 工事全体
工事収益 0千円 0千円 300,000千円 300,000千円
工事原価 0千円 0千円 260,000千円 260,000千円
工事利益 0千円 0千円 40,000千円 40,000千円

 

第X1年度
借方 貸方
未成工事支出金(仕掛品) 90,000 材料費・労務費・経費など 90,000

 

第X2年度
借方 貸方
未成工事支出金(仕掛品) 80,000 材料費・労務費・経費など 80,000

 

第X3年度
借方 貸方
未成工事支出金(仕掛品) 90,000 材料費・労務費・経費など 90,000
工事原価(売上原価) 260,000 未成工事支出金(仕掛品) 260,000
工事未収入金(売掛金) 300,000 工事収益(売上高) 300,000

 

工事損失引当金

工事原価総額が工事収益総額を超過する可能性が高く、その金額を合理的に見積もりことができる場合には「工事損失引当金」を計上します。

「工事損失引当金」は、工事契約に係る認識基準が「工事進行基準」と「工事完成基準」のどちらでも適用されます。

なお、「工事損失引当金の繰入額」は工事原価(売上原価)に含め、「工事損失引当金の残高」は貸借対照表に流動負債として計上します。

ただし、貸借対照表に同一の工事契約に関する未成工事支出金(仕掛品)と工事損失引当金が計上される場合は、相殺して表示することも認められています。

 

例題

以下の工事概要に関する契約を「工事進行基準」で認識した場合の各期における損益はいくらとなるか。

 

工事概要
  • 請負金額(工事収益総額) :300,000千円
  • 工事着手から完成までの期間:3年間

請負金額(工事収益総額)とは、顧客との契約金額(売上高)であり、契約を履行すれば顧客から受け取れる確定金額を示している。

 

工事原価
項目 第X1年度 第X2年度 第X3年度
工事原価 ①90,000千円 ④120,000千円 ⑦100,000千円
翌期以降から工事完成までにかかる予想原価 ②150,000千円 ⑤100,000千円
工事原価総額 ③240,000千円 ⑥310,000千円 ⑧310,000千円

各年度の工事原価総額については、以下の計算式により算出している。

  • ③=①+②
  • ⑥=①+④+⑤
  • ⑧=①+④+⑦

第X2年度において、当初見込んでいた工事原価総額が大きく上振れて、工事原価総額(310,000千円)が工事収益総額(300,000千円)を上回ってしまったため、「工事損失引当金」の計上が必要となる。

なお、第X3年度においては、第X2年度に見込んだ工事原価が発生している。

 

第X1年度~第X3年度の損益計算(工事損失引当金を考慮していない段階)

工事損失引当金を考慮しない段階の各期における損益計算の結果は以下の通りとなります。

項目 第X1年度 第X2年度 第X3年度 工事全体
工事収益 112,500千円 90,726千円 96,774千円 300,000千円
工事原価 90,000千円 120,000千円 100,000千円 310,000千円
工事利益 22,500千円 ▲29,274千円 ▲3,226千円 ▲10,000千円

 

工事損失引当金の計算

第X2年度において、当初見込んでいた工事原価総額が大きく上振れて、工事原価総額(310,000千円)が工事収益総額(300,000千円)を上回っているため、「工事損失引当金」の計上が必要となります。

 

第X2年度における仕訳

工事原価総額が工事収益総額を上回ると認識した第X2年度において工事損失引当金を計上して工事原価(工事損失引当金繰入)に追加します。

借方 貸方
工事原価
(工事損失引当金繰入)
3,226 工事損失引当金 3,226

 

第X3年度における仕訳

第X3年度は工事損失が確定するので、工事原価(工事損失引当金戻入)から差し引きます。

借方 貸方
工事損失引当金 3,226 工事原価
(工事損失引当金戻入)
3,226

 

第X1年度~第X3年度の損益計算(工事損失引当金を計上した結果)

工事損失引当金を計上した場合の損益計算は以下の通りとなります。
なお、工事収益の計算は工事損失引当金を計上しない工事原価にて算出するため、「工事損失引当金を考慮していない段階」と同額のままです。

 

項目 第X1年度 第X2年度 第X3年度 工事全体
工事収益 112,500千円 90,726千円 96,774千円 300,000千円
工事原価 90,000千円 123,226千円 96,774千円 310,000千円
工事利益 22,500千円 ▲32,500千円 0千円 ▲10,000千円
工事損失引当金 3,226千円

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成29年度 第4問】

20X1年度に工事契約を締結し、工事を開始した。20X3年度に工事が完成し、引渡しを行った。各期の工事収益は工事進行基準により計上している。また、決算日における工事進捗度は原価比例法により算出している。契約に基づく工事収益総額は240,000千円であり、当初の工事原価総額の見積額は180,000千円である。工事進行基準を適用した場合の20X1年度の工事収益として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 

[資料]

20X1年 20X2年 20X3年
各期の工事原価 90,000千円 60,000千円 50,000千円
次期から完成までの工事原価の見積額 90,000千円 50,000千円

 

[解答群]

ア 90,000 千円
イ 108,000 千円
ウ 120,000 千円
エ 180,000 千円

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

工事進行基準では「原価比例法」により「工事原価総額」に対する「当該年度の工事原価」の割合から「工事進捗度」を測定して各期における「工事収益」を算出します。

問題では「20X1年」の工事収益だけを求められていますが、念のため「20X1年」から「20X3年」までの工事収益の求め方を説明します。

問題を解くために必要な知識としては、今回の記事で紹介した内容よりも「工事契約(1)」に記載している内容の方が合致しています。

 

20X1年

「工事収益総額」に「工事原価総額」に対する「20X1年に発生した工事原価」の割合を乗じて「20X1年の工事収益」を算出します。

なお、「工事原価総額」は、「20X1年に発生した工事原価」と「次期から完成までの工事原価の見積額」を加算して算出します。

 

 

20X2年

「工事収益総額」に「工事原価総額」に対する「20X1年と20X2年に発生した工事原価の合計」の割合を乗じて「工事収益累計額(20X1年と20X2年の工事収益)」を算出した後、「20X1年の工事収益」を差し引いて「第X2年度の工事収益」を算出します。

なお、「工事原価総額」は、「20X1年と20X2年に発生した工事原価の合計」と「次期から完成までの工事原価の見積額」を加算して算出します。

 

 

20X3年(工事完成年度)

20X3年(工事完成年度)における工事収益は、「工事収益総額」から「前年度までの工事収益累計額」を差し引いて算出します。

 

 

20X1年~20X3年の損益計算

各期における損益計算の結果は以下の通りとなります。

20X1年 20X2年 20X3年 合計
工事収益 120,000千円 60,000千円 60,000千円 240,000千円
工事原価 90,000千円 60,000千円 50,000千円 200,000千円
工事利益 30,000千円 0千円 10,000千円 40,000千円

 

答えは(ウ)です。


 

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