財務・会計 ~H23-17 MM理論(5)~

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今回は、「財務・会計 ~H23-17 MM理論(5)~」について説明します。

 

目次

財務・会計 ~平成23年度一次試験問題一覧~

平成23年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

MM理論 -リンク-

「MM理論」とは、1958年にフランコ・モディリアーニとマートン・ミラーが提唱した理論であり、完全市場では企業の資本構成および配当政策は企業価値に影響を与えないというものです。

「MM理論」については、過去にも説明していますので、以下のページにもアクセスしてみてください。

 

MM理論のポイント

「MM理論」の問題を解くうえでポイントとなる3点を以下に示します。

以下のポイントを押さえておけば、一次試験に出題される問題の多くは解くことができるはずです。

 

MM理論の問題を解くためのポイント

  1. 法人税が存在しない場合、企業の資本構成(負債と株主資本の割合)が変わっても企業価値は変わらない。
  2. 法人税が存在する場合、負債の割合が大きい企業の方が、節税効果が得られるため、負債の割合が少ない企業より、企業価値が高くなる。
  3. 負債による節税効果は「負債額×法人税率」で算出される。

 

「配当政策」に関するMM理論

  1. 完全市場では企業の配当政策は企業価値(株主価値)に影響を与えない。

 

自己株式の取得

自己株式の「取得」とは、一般的に「自社株買い」という言葉で表現され、企業が株式市場から自社の株式を買い戻すことをいいます。

なお、取得する自己株式の期間や数量などについての制限はありません。(以前は制限がありましたが廃止されました)

 

自己株式の貸借対照表への表示

貸借対照表において、自己株式は「取得原価」で「純資産の部」の「株主資本」から控除する形で表示します。「控除する」とは「▲(マイナス)」で表示することを意味しています。

 

 

会社法において、自社の株式(自己株式)を取得するということは、実質的に株主から出資された資本を払い戻す性格を有していると捉えられているため、自己株式は貸借対照表において「純資産の部」の「株主資本」からの控除項目として区分表示されます。

 

仕訳

現金預金により、自己株式を「取得」する場合の仕訳を以下に示します。

自己株式は、純資産の部において株主資本から控除する形で表示されるため、自己株式を「取得」すると「純資産」が減少します。

 

借方 貸方
自己株式
(自己株式の増加=純資産の減少
XX,XXX,XXX 現金預金
流動資産の減少
XX,XXX,XXX

 

自己株式の「取得」に際して付随費用が発生する場合は、「支払手数料」などの科目で「営業外費用」に計上します。

 

借方 貸方
自己株式
支払手数料
XX,XXX,XXX
XX,XXX
現金預金 XX,XXX,XXX

 

自社株式価値への影響

企業が自己株式を「取得」すると、発行済み株式総数と純資産の減少により「EPS(1株当たり純利益)」「PER(株価収益率)」「ROE(自己資本当期純利益率)」などの株式指標が改善して自社株式の価値が高まるため、株式市場において株価が上昇する可能性があります。

 

 

株式の価値が高まることで株価の上昇も期待されるため、自己株式の取得は株主にとっても「キャピタルゲイン」の増加を期待できるうれしい利益還元政策です。

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成23年度 第17問】

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

なお、以下では、市場は完全で、税金や取引コストは存在しないものとする。

 

E社では現在、今期の配当政策を検討中である。E社は、全額自己資本からなる企業で今期末において現金1,000万円と固定資産9,000万円を保有している。E社の固定資産からは毎期900万円の営業利益があげられており、次期以降も同額の営業利益が期待されている。E社では減価償却費を営業活動維持のために全額設備投資にあてており、また運転資本の増減もなく、減価償却費以外の費用はすべて現金支出であるため、上記の営業利益はフリーキャッシュフローに一致する。E社の現在の株価は100円であり、発行済み株式数は100万株である。

 

(設問1)

E社が現在保有する現金を全額配当した場合、配当支払後の株価を説明する記述として、最も適切なものはどれか。

 

ア 現金配当を行った場合、株価は配当前と配当後で変化しない。
イ 現金配当を行った場合、株価は配当前と比較して10円下落する。
ウ 現金配当を行った場合、株価は配当前と比較して10円上昇する。
エ 現金配当を行った場合、株価は配当前と比較して20円上昇する。

 

(設問2)

E社が現在保有する現金を全額現金配当した場合と1株100円にて当該現金を自己株式の買戻しに充てた場合とでは、既存株主が得る価値にどのような影響があるか。既存株主が得る価値に与える影響の説明として、最も適切なものはどれか。

 

ア 現金配当を行った場合と自己株式の買戻しを行った場合との間で、既存株主が得る価値に差異は生じない。
イ 現金配当を行った場合の方が自己株式の買戻しを行った場合よりも、およそ10%ほど既存株主が得る価値が高くなる。
ウ 現金配当を行った場合の方が自己株式の買戻しを行った場合よりも、およそ10%ほど既存株主が得る価値が低くなる。
エ 現金配当を行った場合の方が自己株式の買戻しを行った場合よりも、およそ20%ほど既存株主が得る価値が高くなる。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答(設問1)

E社は全額自己資本からなる企業のため、株価は「総資産(株式時価総額) ÷ 発行済株式数」により算出されます。

現金「1,000万円」を全額配当した場合、「総資産(株式時価総額)」が「10,000万円」から「9,000万円」に減少するため、株価は以下の通りとなります。

 

  • 9,000万円 ÷ 100万株 = 90円/1株

 

E社の配当前の株価は100円のため、株価は現金配当により10円下落します。

 

答えは(イ)です。


 

考え方と解答(設問2)

保有する現金1,000万円で、自社株式を1株100円で買い入れる場合、買い入れ株式数は10万株(1,000万円÷100円/株=10万株)をとなるため、「発行済株式数」が100万株から90万株に減少します。

保有する現金1,000万円を全額配当した場合と、自社株買いに充てた場合で、いずれも「総資産(株式時価総額)」は9,000万円となりますが、株価と発行済株式数の構成は異なってきます。

 

配当政策 株価 発行済株式数 株式時価総額
現金配当 90円 100万株 9,000万円
自社株買い 100円 90万株 9,000万円

 

「自社株買い」の方が株価が高くなるため「現金配当」よりも「既存株主が得る価値」が高くなるように感じますが、「現金配当」の場合、株主は配当金として10円を受け取っているため、いずれの場合でも「既存株主が得る価値」に差異は生じません

 

  • 現金配当
    株価/90円+現金配当/10円=既存株主が得る価値/100円
  • 自社株買い
    株価/100円=既存株主が得る価値/100円

 

これは、「完全市場では企業の配当政策は企業価値(株主価値)に影響を与えない。」というMM理論に基づく内容です。

 

答えは(ア)です。


 

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