今回は、「財務・会計 ~H23-13 正味運転資本(2)~」について説明します。
「正味運転資本」単独で出題されることは少ないですが、フリーキャッシュフローの算出などに必要な知識として、二次試験の事例IVでも出題されますので、一次試験の段階からしっかりと勉強しておいて損はありません。
目次
財務・会計 ~平成23年度一次試験問題一覧~
平成23年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
正味運転資本 -リンク-
「正味運転資本」については、過去の記事の中でも必要に応じて説明していますので、以下のページにもアクセスしてみてください。
- H28-17-2 設備投資の経済性計算(3)投資により得られるCF
- H28-17-3 設備投資の経済性計算(4)例題(法人税を考慮しない場合)
- H28-17-4 設備投資の経済性計算(5)例題(法人税を考慮する場合)
- H28-9-2 財務指標の計算(2)
- フリーキャッシュフロー(FCF)(1)
- 正味運転資本(1)
正味運転資本の増加額
「正味運転資本」は、売掛金、棚卸資産などの流動資産や、買掛金などの流動負債の増減から算出することができます。
例えば、今年度に商品が売れたが、実際に現金が振り込まれるのは来年度というように、フリーキャッシュフローの計算などにおいて、収益発生(費用発生)と現金収入(現金支出)のタイミングのずれを正味運転資本の増減で調整します。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成23年度 第13問】
次のa~eのうち、正味運転資本の増加をもたらす要因の組み合わせとして最も適切なものを下記の解答群から選べ。
a 固定資産の増加
b 固定負債の増加
c 自己資本の減少
d 流動資産の減少
e 流動負債の減少
[解答群]
ア aとe
イ bとc
ウ bとe
エ cとd
オ dとe
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
正味運転資本の増加要因を確認する問題ですが、発想の転換(ひらめき!)が必要です。
正味運転資本の増加額
「正味運転資本」は、売掛金、棚卸資産などの流動資産や、買掛金などの流動負債の増減から算出することができます。
選択肢a~eまで確認すると、選択肢eの「流動負債の減少」が正味運転資本の増加要因であることは確認できますが、それ以外の選択肢に流動資産、流動負債に該当する項目が見当たりません。
貸借対照表による正味運転資本の図示
①流動資産と流動負債から求める場合
「正味運転資本」は「流動資産」から「流動負債」を差し引いて求めるため、貸借対照表で図示すると以下の通りとなります。
②固定資産と固定負債と自己資本(純資産)から求める場合
「正味運転資本」を求めるには、「流動資産」から「流動負債」を差し引く方法だけでなく、「自己資本(純資産)」と「固定負債」の合計から「固定資産」を差し引いても求めることができます。
正味運転資本が増加するパターン
①流動資産と流動負債から求める場合
- 流動資産が増加した場合
- 流動負債が減少した場合
②固定資産と固定負債と自己資本(純資産)から求める場合
- 固定負債が増加した場合
- 自己資本(純資産)が増加した場合
- 固定資産が減少した場合
解答
以下の通り、選択肢bとeが正解です。
a 固定資産の増加 ⇒ ×
b 固定負債の増加 ⇒ ○
c 自己資本の減少 ⇒ ×
d 流動資産の減少 ⇒ ×
e 流動負債の減少 ⇒ ○
答えは(ウ)です。
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