財務・会計 ~H24-10-1 生産性分析(1)~

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今回は、「財務・会計 ~H24-10-1 生産性分析(1)~」について説明します。

 

目次

財務・会計 ~平成24年度一次試験問題一覧~

平成24年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

生産性分析 -リンク-

本ブログにて「生産性分析」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

生産性

「生産性」とは「生産要素の投入量(インプット)」に対する「産出量(アウトプット)」の割合として求められ、その数値が高いほど生産性が高いことを表しています。

世界の中で、日本は生産性が低い国であると位置づけられていますが、これから労働人口が減少していく日本にとっては、それぞれの国内企業が「生産性」を高めて、日本全体の経済規模を維持拡大していくことが重要な課題とされています。

 

生産性分析

「生産性分析」では、従業員(労働力)や設備投資(資本)といった経営資源(インプット)が、どれだけ効率的に売上や付加価値(アウトプット)を生みだすことができているのかを評価するために「労働生産性」を「売上高」「有形固定資産」「総資本」といった要素で分解して分析していきます。

なお、アウトプットである「付加価値」とは「企業が新たに生み出した価値」のことをいいます。

 

付加価値

「付加価値」とは「企業が新たに生み出した価値」であり、その価額の算出方法は「中業企業庁Webサイト」において以下のように定義されています。(非常に複雑ですし、様々な定義があるため、公式を用いて金額を算出する問題が出題される可能性は低いと思います。)

 

付加価値額=営業純利益(営業利益-支払利息等)+給与総額{役員給与+従業員給与(含む賞与)}+福利厚生費+動産・不動産賃借料+支払利息等+租税公課

中小企業庁Webサイトから引用しましたが、当該ページが削除されているようです。
(参考:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h21/h21/html/K7201010.html)

 

「付加価値額」は、企業の売上高から自社が新たに生み出した価値ではない部分である「材料費や外注加工費」と「営業活動以外で発生した収益と費用」を除いた金額という考え方について理解しておくことをお薦めします。

 

労働生産性

「労働生産性」とは、従業員数に対する付加価値額の割合として表される指標であり、従業員が1人当たりでどれだけの付加価値を生み出すことができているかを示しています。

 

 

「労働生産性」とは、労働者がどれだけ効率的に成果(付加価値)を生み出したかを定量的に数値化したものであり、労働者の能力向上や効率改善に向けた努力、経営効率の改善等によって向上することできます

「労働生産性」はその数値が高いほど優れていますが、企業の業種や規模によって大きく変動することに注意が必要です。

 

例えば、宿泊業・飲食サービス業といった「サービス業」は以下の特徴を有するため、他業種と比較すると「労働生産性」が相対的に低くなっています

 

  1. 同時性:サービスの提供と消費が同時に行われる
  2. 不可分性:サービスの提供と利用が同じ場所で行われる
  3. 消失:サービスは在庫を持てない

 

サービス業は、在庫調整により生産活動を平準化することのできる工業製品とは異なり、需要が少ない時期に商品(サービス)を製造(提供)して在庫として作り置きしておくことができないため、短期的な需要の変動に合わせた労働投入量の調整が難しく「労働生産性」を高めることができません。

 

労働生産性の売上高による分解

「労働生産性」は「売上高」により「付加価値率」と「従業員1人当たり売上高」に分解することができます。

 

 

付加価値率

「付加価値率」とは、売上高に対する付加価値額の割合として表される指標であり、以下の公式により算出することができます。

「付加価値率」はその数値が高いほど優れています

 

 

企業は、自社独自の付加価値により他社との差別化を図ることによって、売上や利益の拡大を目指しているため、一般的に「付加価値率」はその数値が高いほど優れているといえますが、業種によって大きく変動する点に注意が必要です。

 

従業員1人当たり売上高

「従業員1人当たり売上高」とは、従業員数に対する売上高の割合として表される指標であり、以下の公式により算出することができます。

「従業員1人当たり売上高」はその数値が高いほど優れています

 

 

労働生産性の有形固定資産による分解

労働生産性は「有形固定資産」により「設備生産性(設備投資効率・資本生産性)」と「労働装備率(資本装備率)」に分解することができます。

ここで厄介なのは、分解したそれぞれの指標に複数の呼び方があり、これらの呼称をすべて覚えておく必要があることです。

 

 

「資本生産性」は「労働生産性」を「有形固定資産」により分解した場合と「労働生産性」を「総資本」により分解した場合の両方のパターンで登場するため、問題文でどちらを表しているのか見極める必要があります。ご注意ください。

 

設備生産性(設備投資効率・資本生産性)

「設備生産性(設備投資効率・資本生産性)」とは、有形固定資産価額に対する付加価値額の割合として表される指標であり、投資した機械や設備、土地等の資本によってどれだけの付加価値を生み出すことができているかを示しています。

「設備生産性(設備投資効率・資本生産性)」はその数値が高いほど優れています

 

 

「設備生産性(設備投資効率・資本生産性)」とは、保有している機械や設備、土地等の資本がどれだけ効率的に成果(付加価値)を生み出すことができているかを定量的に数値化したものであり、設備の利用頻度や稼働率向上、効率改善に向けた努力等によって向上することできます

 

労働装備率(資本装備率)

「労働装備率(資本装備率)」とは、従業員数に対する有形固定資産価額の割合として表される指標であり、従業員1人当たりの機械や設備、土地等の投資額を示しています。

「労働装備率(資本装備率)」はその数値が高いほど優れており、その数値が高ければ高いほど「資本集約的」であり、反対に低くなるほど「労働集約的」と評価されます。

 

 

機械や設備、土地等への投資によって自動化や合理化が進んでいる企業では、従業員数に対する有形固定資産価額の割合が高くなるため「労働装備率(資本装備率)」が高くなります

「労働装備率(資本装備率)」は業種によって大きく変動する点に注意が必要であり、また企業が採用している減価償却方法や土地を保有しているかなどの理由によっても、その数値が大きく変動するため、他の企業と比較する場合は、条件を揃えて比較する必要があります。

 

労働生産性の総資本による分解

労働生産性は「総資本」により「資本生産性(総資本付加価値率・総資本投資効率)」と「資本装備率(資本集約度)」に分解することができます。

ここで厄介なのは、分解したそれぞれの指標に複数の呼び方があり、これらの呼称をすべて覚えておく必要があることです。

 

 

「資本生産性」は「労働生産性」を「有形固定資産」により分解した場合と「労働生産性」を「総資本」により分解した場合の両方のパターンで登場するため、問題文でどちらを表しているのか見極める必要があります。ご注意ください。

 

資本生産性(総資本付加価値率・総資本投資効率)

「資本生産性(総資本付加価値率・総資本投資効率)」とは、総資本に対する付加価値額の割合として表される指標であり、以下の公式により算出することができます。

「資本生産性(総資本付加価値率・総資本投資効率)」はその数値が高いほど優れています

 

 

資本装備率(資本集約度)

「資本装備率(資本集約度)」とは、従業員数に対する総資本の割合として表される指標であり、以下の公式により算出することができます。

「資本装備率(資本集約度)」はその数値が高いほど優れています

 

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成24年度 第10問】

当期と前期との比較損益計算書(要約)は次のとおりである。これに基づいて下記の設問に答えよ。

 

比較損益計算書(要約)

(単位:百万円)
科目 前期(第22期) 当期(第23期)
売上高 1,000 1,200
売上原価 450 530
売上総利益 550 670
販売費及び一般管理費 430 550
営業利益 120 120
営業外収益 40 60
営業外費用 30 60
経常利益 130 120
特別利益 10 20
特別損失 20 30
税引前当期純利益 120 110
法人税等 50 45
当期純利益 70 65

 

(設問1)

付加価値率に前期と当期で変化がなく、平均従業員数が前期は30人、当期は32人であるとき、生産性の変化に関する記述として最も適切なものはどれか。

 

ア 従業員1人当たり売上高が上昇し、付加価値労働生産性が上昇した。
イ 従業員1人当たり売上高が上昇し、付加価値労働生産性が低下した。
ウ 従業員1人当たり売上高が低下し、付加価値労働生産性が上昇した。
エ 従業員1人当たり売上高が低下し、付加価値労働生産性が低下した。

 

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答(設問1)

「生産性」の指標である「労働生産性」「付加価値率」「従業員1人当たり売上高」が、前期の数値と比較して上昇しているのか低下しているかを求められています。

上記でも説明した通り、「付加価値額」の算出方法には様々な定義があり、1つの選択肢を正解とすることができないと考えられるため、「付加価値率は前期と当期で変化がない」という前提で、正解を導くストーリーとなっています。

 

従業員1人当たり売上高の変化

「従業員1人当たり売上高」とは、従業員数に対する売上高の割合として表される指標であり、以下の公式により算出することができます。

「従業員1人当たり売上高」はその数値が高いほど優れています

 

 

問題で与えられたデータから、第22期(前期)と第23期(当期)を比較すると「従業員一人当たり売上高」は上昇していることが分かります。

 

項目 第22期 第23期
売上高 1,000百万円 1,200百万円
平均従業員数 30人 32人
従業員1人当たり売上高 33.3百万円/人 37.5百万円/人

 

労働生産性の変化

「労働生産性」は「売上高」により「付加価値率」と「従業員1人当たり売上高」に分解することができます。

 

 

第22期(前期)と第23期(当期)で付加価値率が変化しない場合、「従業員一人当たり売上高」が上昇すると「付加価値労働生産性」も上昇します。

 

答えは(ア)です。


 

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