今回は、「財務・会計 ~H25-14 加重平均資本コスト(WACC)(4)~」について説明します。
目次
財務・会計 ~平成25年度一次試験問題一覧~
平成25年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
資本資産評価モデル(CAPM) -リンク-
本ブログにて「資本資産評価モデル(CAPM)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- H29-20 資本資産評価モデル(CAPM)(1)
- H28-12 資本資産評価モデル(CAPM)(2)
- H27-18 資本資産評価モデル(CAPM)(3)
- H26-18 資本資産評価モデル(CAPM)(4)β値
- H26-19 配当割引モデル(2)
- H25-21 資本資産評価モデル(CAPM)(5)β値
- H23-19 資本資産評価モデル(CAPM)(6)β値
- H23-20-2 配当割引モデル(3)
加重平均資本コスト(WACC) -リンク-
本ブログにて「加重平均資本コスト(WACC)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- R3-15 加重平均資本コスト(WACC)(9)
- R1-21 加重平均資本コスト(WACC)(8)
- H29-24 加重平均資本コスト(WACC)(1)
- H28-14 加重平均資本コスト(WACC)(2)
- H27-14 加重平均資本コスト(WACC)(3)
- H24-16 加重平均資本コスト(WACC)(5)
- H23-16 加重平均資本コスト(WACC)(6)
- H22-17-1 加重平均資本コスト(WACC)(7)
資本コスト
「資本コスト」とは、企業が存続する限り最低限発生するコストであり、企業が投資を実行するべきか判断する際に使用する重要な基準です。
投資をしても「資本コスト」以上の利益を生みだす成果が得られない限り、企業としては投資をやるべきではないと判断します。なぜなら、企業としては存続するだけで最低限発生するコスト(=資本コスト)以上の利益を生み出さないと徐々に資金が減少してしまうからです。
「資本コスト」は、「加重平均資本コスト(WACC)」により「負債コスト」と「株主資本コスト」の加重平均で算出します。
資本資産評価モデル(CAPM:Capital Asset Pricing Model)
「資本資産評価モデル(CAPM)」とは「株主資本コスト(株主の期待収益率)」を算出する方法のことをいいます。
株主資本コスト(株主の期待収益率)
「株主資本コスト(株主の期待収益率)」は、立場の違いによっていろいろな呼び方がありますが、「自己資本コスト = 株主資本コスト = 株主の期待収益率 = 証券の期待収益率」です。
企業から見ると「株主資本コスト(自己資本コスト)」と呼ばれ、投資家から見ると「株主の期待収益率(証券の期待収益率)」と呼ばれます。
「株主資本(自己資本)」とは資本金などの純資産です。資本金を調達するために株式を発行している場合、株主に対して「配当金」を支払わなくてはなりません。これが「株主資本コスト(自己資本コスト)」です。
逆に、投資家の視点から見ると、企業の株式を購入することで「配当金」によるリターン(収益)を期待しています。これが「株主の期待収益率(証券の期待収益率)」といいます。
なお、投資家は株価の低下や企業の倒産等により投資資金を失うリスクがあるため、投資家が株式を購入したときは銀行に預けた時に受け取る利息よりも高いリターン(収益)を期待しています。
CAPMによる株主資産コスト(株主の期待収益率)の算出
「株主資本コスト(株主の期待収益率)」は「資本資産評価モデル(CAPM)」を用いた以下の公式により算出することができます。
安全利子率(無リスク利子率・リスクフリーレート)
リスクを持たない資産(安全資産)により期待できる利子率です。
銀行の利子率をイメージすると分かりやすいかと。銀行に預けておけば、預金額が減ったりすることがないため安全ですが、得られる利子は少ないですよね。
分かりやすくするため銀行預金で話をしましたが、実際には長期国債の利回りが適用されます。
β値
「β値」とは、ある企業の株式の景気に対する感度を示しており、株式市場が1%変化したときに、その企業の株式から得られるリターンが何%変化するかを表す係数であるため、「β値」が大きいほど「ハイリスク・ハイリターン」であるということになります。
一般的に、景気変動の影響を受けにくい商品を扱う企業の数値は低く、金融業や最先端技術を扱う企業など景気変動の影響を受けやすい企業の数値は高くなります。
「β値」は、以下の計算式で求めることができます。
市場期待収益率
投資家が株式などの金融商品に投資することにより期待できる平均的な収益率です。
証券市場で扱っている株式全体の収益率をイメージするとわかりやすいかと。
上述していますが、投資家は株式を購入しても株価の低下や企業の倒産等により投資資金を失うリスクがあるため、銀行に預ける場合の利息(安全利子率)よりも高い収益率を期待しています。
加重平均資本コスト(WACC)
「加重平均資本コスト(WACC)」は、「負債コスト(時価)」と「株主資本コスト(時価)」の加重平均で「資本コスト」を算出する方法であり、その公式は以下の通りです。
「加重平均資本コスト(WACC)」を求める問題では、以下2点のポイントがあります。
- 加重平均資本コストの計算には「株主資本コスト」と「他人資本コスト(負債)」の「時価」を使用します。
- 加重平均資本コストの計算には「税引後負債コスト」を使用します。
負債コスト
負債とは借入金です。負債(借入金)があるということは借入先に「支払利息」を支払わなくてはなりません。これが負債コストであり「支払利息 ÷ 負債総額」で算出することができます。
「支払利息 ÷ 負債総額」で算出される負債コストは「税引前負債コスト」といいますが、黒字経営の企業の場合、支払利息を払うことにより利益が減少するため、節税効果により支払う法人税が少なくなります。この節税効果を加味して「税引後負債コスト」を算出します。
自己資本コスト(株主資本コスト)
「株主資本コスト(株主の期待収益率)」は、立場の違いによっていろいろな呼び方がありますが、「自己資本コスト = 株主資本コスト = 株主の期待収益率 = 証券の期待収益率」です。
企業から見ると「株主資本コスト(自己資本コスト)」と呼ばれ、投資家から見ると「株主の期待収益率(証券の期待収益率)」と呼ばれます。
「株主資本(自己資本)」とは資本金などの純資産です。資本金を調達するために株式を発行している場合、株主に対して「配当金」を支払わなくてはなりません。これが「株主資本コスト(自己資本コスト)」です。
逆に、投資家の視点から見ると、企業の株式を購入することで「配当金」によるリターン(収益)を期待しています。これが「株主の期待収益率(証券の期待収益率)」といいます。
なお、投資家は株価の低下や企業の倒産等により投資資金を失うリスクがあるため、投資家が株式を購入したときは銀行に預けた時に受け取る利息よりも高いリターン(収益)を期待しています。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成25年度 第14問】
以下のデータからA社の加重平均資本コストを計算した場合、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
有利子負債額:4億円
株式時価総額:8億円
負債利子率:4%
法人税率:40%
A社のベータ(β)値:1.5
安全利子率:3%
市場ポートフォリオの期待収益率:8%
[解答群]
ア 5.8 %
イ 6.7 %
ウ 7.8 %
エ 8.3 %
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
問題文に与えられているデータから「株主資本コスト」を計算した後、「加重平均資本コスト(WACC)」を計算する問題です。
「加重平均資本コスト(WACC)」の問題としては、一番オーソドックスなパターンなので、確実に解けるよう確認してください。
株主資本コストの算出
「自己資本コスト(株主資本コスト)」を算出する方法には「配当割引モデル」や「資本資産評価モデル(CAPM)」などがありますが、今回の問題では「資本資産評価モデル(CAPM)」を使用します。「CAPM」の公式は以下の通りです。
株主資本コストは問題文に与えられている以下のデータから求めることができます。
- A社のベータ(β)値:1.5
- 安全利子率:3%
- 市場ポートフォリオの期待収益率:8%
株主資本コストを求めます。
- 株主資本コスト=3%+1.5×(8%-3%)=10.5%
加重平均資本コスト(WACC)の算出
「加重平均資本コスト(WACC)」は、「負債コスト(時価)」と「株主資本コスト(時価)」の加重平均で「資本コスト」を算出する方法であり、その公式は以下の通りです。
問題文に記述されている情報から「負債」と「純資産(株主資本)」の資本構造を確認してから「加重平均資本コスト(WACC)」を算出していきます。
- 有利子負債額:4億円
- 株式時価総額:8億円
- 負債利子率:4%
- 法人税率:40%
- 株主資本コスト:10.5%(前半で算出した数値)
加重平均コスト(WACC)を求める問題のポイントは、以下2点です。
- 加重平均資本コストの算出には「株主資本コスト」と「他人資本コスト(負債)」の「時価」を使用します。
- 加重平均資本コストの算出には「税引後負債コスト」を使用します。
「加重平均資本コスト(WACC)」を算出するために、以下の公式により「税引前負債コスト」を「税引後負債コスト」に変換します。
上記の資本構造における「加重平均資本コスト(WACC)」は以下の通りです。
- 4億円 ÷(4億円+8億円)× 4% ×(1-40%)+ 8億円 ÷(4億円+8億円)× 10.5% = 7.8%
答えは(ウ)です。
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