今回は、「財務・会計 ~H27-13 MM理論(2)~」について説明します。
目次
財務・会計 ~平成27年度一次試験問題一覧~
平成27年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
MM理論 -リンク-
「MM理論」とは、1958年にフランコ・モディリアーニとマートン・ミラーが提唱した理論であり、完全市場では企業の資本構成および配当政策は企業価値に影響を与えないというものです。
「MM理論」については、過去にも説明していますので、以下のページにもアクセスしてみてください。
- H29-17 MM理論(1)
- H26-15-2 MM理論(3)
- H24-17-2 MM理論(4)
- H23-17 MM理論(5)
- H22-14-2 MM理論(6)
- R1-22 MM理論(7)
- R2-24 MM理論(8)
MM理論のポイント
「MM理論」の問題を解くうえでポイントとなる3点を以下に示します。
以下のポイントを押さえておけば、一次試験に出題される問題の多くは解くことができるはずです。
MM理論の問題を解くためのポイント
- 法人税が存在しない場合、企業の資本構成(負債と株主資本の割合)が変わっても企業価値は変わらない。
- 法人税が存在する場合、負債の割合が大きい企業の方が、節税効果が得られるため、負債の割合が少ない企業より、企業価値が高くなる。
- 負債による節税効果は「負債額×法人税率」で算出される。
試験問題
それでは、実際の問題を解いてみます。
【平成27年度 第13問】
MM理論に基づく最適資本構成に関する以下の記述について、下記の設問に答えよ。
MM理論の主張によると、完全な資本市場の下では、企業の資本構成は企業価値に影響を与えない。しかし、現実の資本市場は完全な資本市場ではない。そこで、完全な資本市場の条件のうち、法人税が存在しないという仮定を緩め、法人税の存在を許容すると、負債の増加は[ A ]を通じて企業価値を[ B ]ことになる。この条件下では、負債比率が[ C ]の場合において企業価値が最大となる。
一方で、負債比率が高まると、[ D ]も高まることから、債権者も株主も[ E ]リターンを求めるようになる。結果として、[ A ]と[ D ]の[ F ]を考慮して最適資本構成を検討する必要がある。
(設問1)
記述中の空欄A〜Cにあてはまる語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。
ア A:支払利息の増加による株主価値の低下 B:高める C: 0%
イ A:支払利息の増加による株主価値の低下 B:低める C:100%
ウ A:節税効果 B:高める C:100%
エ A:節税効果 B:低める C: 0%
(設問2)
記述中の空欄D〜Fにあてはまる語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。
ア D:債務不履行(デフォルト)リスク E:より高い F:トレードオフ
イ D:債務不履行(デフォルト)リスク E:より低い F:相乗効果
ウ D:財務レバレッジ E:より高い F:相乗効果
エ D:財務レバレッジ E:より低い F:トレードオフ
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答(設問1)
「設問1」については、上述した「MM理論のポイント」の2番目を理解しておけば解くことができます。
- 法人税が存在する場合、負債の割合が大きい企業の方が、節税効果が得られるため、負債の割合が少ない企業より、企業価値が高くなる。
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MM理論の主張によると、完全な資本市場の下では、企業の資本構成は企業価値に影響を与えない。しかし、現実の資本市場は完全な資本市場ではない。そこで、完全な資本市場の条件のうち、法人税が存在しないという仮定を緩め、法人税の存在を許容すると、負債の増加は節税効果を通じて企業価値を高めることになる。この条件下では、負債比率が100%の場合において企業価値が最大となる。
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答えは(ウ)です。
考え方と解答(設問2)
「設問2」については、説明は省略させてください。
端的に言うと。。。「借金が増えると返済が滞る危険性が高まるため、債権者や株主が早く債権を回収しようとしてきます。資本構成もバランスが大事です」。。。。ということを書いています。
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一方で、負債比率が高まると、債務不履行(デフォルト)リスクも高まることから、債権者も株主もより高いリターンを求めるようになる。結果として、節税効果と債務不履行(デフォルト)リスクのトレードオフを考慮して最適資本構成を検討する必要がある。
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選択肢のひとつ「財務レバレッジ」について補足しておきます。
「レバレッジ」とは、日本語では「てこの原理」のことを示しており、少ない資金で大きな利益を手に入れるという意味で使われています。
「財務レバレッジ」は、自己資本比率の逆数(総資本÷自己資本)で求められ、数値が高いほど「借入金」の資本構成比率が高いことを示しています。
つまり、少ない資金(自己資本)でも借入金(他人資本)を活用することで、事業の効率性を高める(大きな利益を手に入れる)ことができます。
答えは(ア)です。
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