今回は、「財務・会計 ~H28-9-2 財務指標の計算(2)~」について説明します。
ただし、二次試験(事例Ⅳ)の第1問(経営分析)で必要な「財務指標」は限られているため、あらかじめ確認(事例Ⅳ ~①経営分析~)してから、一次試験の勉強に取り組みましょう。
目次
財務・会計 ~平成28年度一次試験問題一覧~
平成28年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
財務指標の計算 -リンク-
本ブログにて「財務指標の計算」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 財務指標
- R3-10 財務指標の計算(14)
- R2-11 財務指標の計算(13)
- R1-11 財務指標の計算(12)
- H29-11 財務指標の計算(1)
- H27-11 財務指標の計算(3)
- H26-9 財務指標の計算(4)
- H26-10 財務指標の計算(5)
- H25-5 財務指標の計算(7)
- H24-17-1 財務指標の計算(8)
- H24-20-2 財務指標の計算(9)
- H23-9 財務指標の計算(10)
- H22-8 財務指標の計算(11)
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成28年度 第9問】
次の貸借対照表と損益計算書について、下記の設問に答えよ。
貸借対照表(単位:千円) 資産の部 負債・純資産の部 20X1年 20X2年 20X1年 20X2年 現金預金 30,000 20,000 買掛金 30,000 50,000 売掛金 20,000 55,000 未払費用 9,000 17,000 貸倒引当金 △1,000 △3,000 長期借入金 - 100,000 商品 40,000 50,000 資本金 100,000 100,000 建物・備品 100,000 225,000 利益剰余金 20,000 40,000 減価償却累計額 △30,000 △40,000 159,000 307,000 159,000 307,000
20X2年 損益計算書(単位:千円) 売上原価 60,000 売上 125,000 給与 28,000 減価償却費 10,000 貸倒引当金繰入 2,000 支払利息 5,000 当期純利益 20,000 125,000 125,000
(設問2)
財政状態に関する記述として最も適切なものはどれか。
ア 固定比率は改善している。
イ 自己資本比率は改善している。
ウ 正味運転資本は減少している。
エ 流動比率は悪化している。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答(設問2)
財務指標の公式に当てはめるために、まずは貸借対照表を「流動資産」「固定資産」「流動負債」「固定負債」「純資産(自己資本)」に分類して数値を計算します。
【20X1年】
【20X2年】
(ア)固定比率は改善している。
固定比率は「長期安全性」を確認するための財務指標であり、以下の計算式で算出します。
固定比率は、会社の長期的な支払能力を分析する指標であり、数値が低いほど安全性が高いと判断することができます。逆に、100%を上回っている場合は、固定資産への投資額を自己資本でカバーできていない状況であり安全性に問題があると判断することができます。
問題に記載されている貸借対照表のデータを投入して計算してみると、
- 20X1年度:¥70,000 ÷ ¥120,000 × 100% = 58.3%
- 20X2年度:¥185,000 ÷ ¥140,000 × 100% = 132.1%
固定比率は高くなり悪化しています。⇒ 不適切です。
(イ)自己資本比率は改善している。
自己資本比率は「資本調達構造」を確認するための財務指標であり、以下の計算式で算出します。
自己資本比率は、会社の資本構成割合を分析する指標であり、数値が高いほど安全性が高いと判断することができます。数値が低い場合は借入金等の返済が必要な負債の割合が高く、安全性に問題があると判断することができます。また、負債の割合が高いということは利息の支払額(営業外費用)も高くなるため、売上高経常利益率等の数値も悪化している可能性があります。
問題に記載されている貸借対照表のデータを投入して計算してみると、
- 20X1年度:¥120,000 ÷ ¥159,000 × 100% = 75.5%
- 20X2年度:¥140,000 ÷ ¥307,000 × 100% = 45.6%
自己資本比率は低くなり悪化しています。⇒ 不適切です。
(ウ)正味運転資本は減少している。
正味運転資本は財務指標とは少し意味合いが違っており、キャッシュフローの計算等で考慮すべき項目です。
正味運転資本は、売掛金、棚卸資産などの流動資産や、買掛金などの流動資産の増減であり、以下の計算式で算出します。
例えば、今年度に商品が売れたが、実際に現金が振り込まれるのは来年度というように、収益の発生(今年度)と現金収入(来年度)のタイミングがずれたキャッシュフローの補正をするために使用されます。
問題に記載されている貸借対照表のデータを投入して計算してみると、
- 20X1年度:¥89,000 - ¥39,000 = ¥50,000
- 20X2年度:¥122,000 - ¥67,000 = ¥55,000
正味運転資本は増加しています。⇒ 不適切です。
(エ)流動比率は悪化している。
流動比率は「短期安全性」を確認するための財務指標であり、以下の計算式で算出します。
流動比率は、会社の短期的な支払能力を分析する指標であり、数値が高いほど安全性が高いと判断することができます。逆に、100%を下回っている場合は、短期的に返済が必要な流動負債を流動資産でカバーできていない状況であり安全性に問題があると判断することができます。
問題に記載されている貸借対照表のデータを投入して計算してみると、
- 20X1年度:¥89,000 ÷ ¥39,000 × 100% = 228.2%
- 20X2年度:¥122,000 ÷ ¥67,000 × 100% = 182.1%
流動比率は低くなり悪化しています。⇒ 適切です。
答えは(エ)です。
次回から「平成28年度 第8問(全部原価計算・直接原価計算と損益分岐点比率)」について説明します。
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