今回は、「財務・会計 ~H29-25-2 デリバティブ取引(オプション取引)(1)~」について説明します。
目次
財務・会計 ~平成29年度一次試験問題一覧~
平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
デリバティブ取引(一次試験) -リンク-
本ブログにて「デリバティブ取引(一次試験)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- R5-23 デリバティブ取引(為替予約)(2)
- R3-23 デリバティブ取引(オプション取引)(8)
- R2-15 デリバティブ取引(オプション取引)(7)
- R1-14 デリバティブ取引(オプション取引)(6)
- H30-14 デリバティブ取引(4)
- H30-15 デリバティブ取引(オプション取引)(5)
- H30-19 デリバティブ取引(為替予約)(1)
- H29-21 デリバティブ取引(先渡取引と先物取引)(1)
- H29-25-1 デリバティブ取引(1)
- H26-22 デリバティブ取引(オプション取引)(2)
- H25-22 デリバティブ取引(2)
- H25-23 デリバティブ取引(オプション取引)(3)
- H24-21 デリバティブ取引(オプション取引)(4)
- H24-22 デリバティブ取引(先渡取引と先物取引)(2)
- H23-21 デリバティブ取引(金利スワップ取引)(1)
- H22-18 デリバティブ取引(3)
デリバティブ取引(二次試験) -リンク-
本ブログにて「デリバティブ取引(二次試験)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
デリバティブ取引の目的
材料や商品や製品の輸入や輸出を行う企業においては、為替レートの変動に伴う「為替変動リスク」の対策として「デリバティブ取引」を活用します。
「デリバティブ取引」は、為替レートの変動による損失(為替変動リスク)を回避(ヘッジ)するための手段であり、代表的な方法として「為替予約」と「オプション取引」と「スワップ取引」があります。
輸入を行う企業は業績に悪い影響を与える「円安」になった時に備えて、輸出を行う企業は業績に悪い影響を与える「円高」になった時に備えて、「デリバティブ取引」でリスクヘッジを行います。
なお、中小企業診断士試験で出題される「デリバティブ取引」は、あくまで「為替変動リスク」による損失を回避するための手段であり、為替レートの変動により利益を得ることが目的ではありません。
オプション取引
「オプション取引」とは、ある将来の一定の期日(行使期日)または期日までの間(行使期間)に、外貨をある一定の価格(行使価格)で売買する権利を得るための取引です。
「オプション取引」は、行使期日または行使期間中に、実際の為替レートを確認しながら、利益を享受できるような為替レートになっていた場合は権利を行使して取引を行い、逆に損失を受けるような為替レートになっていた場合は権利を放棄して損失を回避することができる選択権を有していることが特徴です。
プレミアム(オプションプレミアム)
オプション取引は、権利を購入するときに「プレミアム(オプションプレミアム)」と呼ばれる手数料を支払います。
つまり、権利を行使した場合でも放棄した場合でもこの手数料が発生するというデメリットがありますが、言い方を変えると「オプション取引」では為替レートがどのように変動しても、最大の損失はこの手数料の金額内に抑えることができるようになっています。
ヨーロピアンタイプとアメリカンタイプ
「オプション取引」に関する説明の中で「行使期日または行使期間中に」という表現をしていますが、オプション取引には「ヨーロピアンタイプ」と「アメリカンタイプ」の2種類があり、権利を行使もしくは放棄するための取引条件が異なっています。
- ヨーロピアンタイプは、行使期日に権利を行使/放棄します。
- アメリカンタイプは、行使期日までの期間であればどのタイミングでも権利を行使することができます。
アメリカンタイプの方が有利な取引条件となっていますが、その分プレミアム(手数料)が割高となっています。
中小企業診断士で出題される「デリバティブ取引」は、利益を得るためではなく損失を回避するためにオプション取引を行うので、プレミアム(手数料)が割安な「ヨーロピアンタイプ」で取引を行います。
オプション取引の損益図
オプション取引の種類
オプション取引には、取引の形態として以下の4種類があります。
- ドルのコールオプション(買う権利)の「買い」
- ドルのコールオプション(買う権利)の「売り」
- ドルのプットオプション(売る権利)の「買い」
- ドルのプットオプション(売る権利)の「売り」
「買い」と「売り」の違いについて
海外企業と取引を行う企業がリスクヘッジを目的として活用するのは「買い」オプションであり、「売り」オプションをリスクヘッジの手段として選択することはありません。
「買い」オプションは損失の最大金額を制限することができますが、「売り」オプションでは損失の金額を制限することができないためです。
「買い」オプションの特徴
- 「買い」オプションでは、為替レートの状況によって権利を行使するか放棄するかを選択することができます。
- 為替レートが「有利」な状況になっていた場合、権利を行使することで利益を享受することができます。
- 為替レートが「不利」な状況になっていた場合、権利を放棄することで損失をプレミアム(手数料)の金額に抑えることができます。
コールオプションの買い
プットオプションの買い
「売り」オプションの特徴
- 「売り」オプションは、「買い」オプションの保有者が権利を行使した場合に、権利を放棄することができなくなり、損失の最大金額を制限することができないため、リスクヘッジの手段としては活用されません。
コールオプションの売り
プットオプションの売り
オプション取引の事例
「ドルのコールオプションの買い」を例に説明していきます。
ドルのコールオプションの買い
オプション取引で、「1か月後に1,000ドルを1ドル=100円で購入する権利」を購入することを「ドルのコールオプションの買い」といいます。
1か月後の為替レートが「1ドル=110円」となっていた場合
為替レートに基づき「1,000ドル」を購入すると「110,000円」を支払う必要がありますが、「1か月後に1,000ドルを1ドル=100円で購入する権利」を行使すれば「1,000ドル」を「100,000円」で購入することができるため、権利を行使します。
「ドル高/円安」となった場合は、権利を行使する。
1か月後の為替レートが「1ドル=90円」となっていた場合
為替レートで取引を行えば「90,000円」で「1,000ドル」を購入することができますが、「1か月後に1,000ドルを1ドル=100円で購入する権利」を行使すると「1,000ドル」を「100,000円」で購入することとなってしまうため、権利を放棄します。
なお、権利を放棄しても、「ドルのコールオプションの買い」を購入するときに支払った「プレミアム(手数料)」は返金されません。
「ドル安/円高」となった場合は、権利を行使せずに放棄する。
試験問題
それでは、実際の試験を解いてみます。
【平成29年度 第25問】
行使価格1,200円のプットオプションをプレミアム100 円で購入した。満期時点におけるこのオプションの損益図として、最も適切なものはどれか。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「デリバティブ取引(オプション取引)」に関する知識を問う問題です。
「プットオプション(売る権利)の買い」を購入した場合の損益図を見極めるため「オプション取引」の特徴について考えていきます。
まず、「オプション取引」には「買い」オプションと「売り」オプションがありますが、リスクヘッジを目的として活用するのは「買い」オプションであり、「売り」オプションをリスクヘッジの手段として選択することはありません。
なぜなら、「買い」オプションは損失の最大金額を制限することができますが、「売り」オプションでは損失の金額を制限することができないためです。
つまり、「買い」オプションの損益図は、損失が水平になる図であることが分かります。
「買い」オプションの特徴
- 「買い」オプションでは、為替レートの状況によって権利を行使するか放棄するかを選択することができます。
- 為替レートが「有利」な状況になっていた場合、権利を行使することで利益を享受することができます。
- 為替レートが「不利」な状況になっていた場合、権利を放棄することで損失をプレミアム(手数料)の金額に抑えることができます。
「プットオプションの買い」の損益図
「プットオプション(売る権利)の買い」の場合、「円高/外貨安」となった場合に、利益を得ることができるため、以下に示す図の通り、左肩上がりの損益図となります。
答えは(ウ)です。
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